メンヘラクラゲはこうして生まれた|16タイプ設計と没案の記録
診断村で一番愛されているメンヘラクラゲたち。16匹をどうやって描き分けたのか、色決めの試行錯誤、没になったキャラの話まで、制作の裏側を全部公開します。
最初の1匹は「メンヘラちゃん」という女の子だった
正直に書く。診断村の最初の失敗作は、この診断だった。
「メンヘラ度診断」を作ろうと決めたとき、キャラクターは「メンヘラちゃん」というひとりの女の子だった。ゆるふわ系の中学生風の女の子で、表情違いを16枚描いて16タイプを表現しようとしていた。
準備稿を並べた瞬間、絶望した。同じ女の子の表情違いを16枚並べても、印象がぼんやりしている。3枚目には「同じ子ばかり」に見えてしまう。1タイプずつの個性が、全然立たない。
数日悩んだ末に、方針を180度変えた。ひとりの女の子ではなく、16匹の生き物にしよう。
なぜクラゲになったのか
「メンヘラ」というテーマを表現できる生き物、と考えたときに出てきた候補は3つあった。
クラゲ / 深海魚 / 蝶
深海魚は「暗さ」がテーマにハマるが、種類差が大きすぎて統一感を出しづらい。蝶は綺麗すぎて「痛み」が乗せられない。
クラゲに決めた理由は3つあった。
1. 透明で儚い
恋愛で不安になる気持ちを、透明で消えそうな体で表現できる。
2. ふわふわ漂う
自分の意思では動けない感じが、感情に振り回される様子と重なる。
3. 種類の描き分けが容易
傘の形、触手の長さ、色、模様——組み合わせで16通り作れる。
決めた瞬間、16タイプの設計がスラスラ書けた。モチーフが決まると診断そのものの解像度が上がる、というのを初めて実感した瞬間だった。
16タイプの設計方針
診断村の16タイプは、すべて「度合い4段階 × 傾向4系統」の掛け合わせで作られている。
メンヘラ度診断の場合:
- 度合い4段階: 安定メンタルタイプ / 既読ちょい気にタイプ / 感情ジェットコースタータイプ / 愛情確認中毒タイプ
- 傾向4系統: 連絡・既読への反応 / 相手の行動への感度 / 不安の伝え方 / 自分の時間の保ち方
同じ「感情ジェットコースタータイプ」の中でも、深読みして一人で抱える人と、その場で相手にぶつける人では、まったく違う体験になる。それを4×4=16マスで丁寧に描き分けたい。これが16タイプ設計の基本思想だ。
各マスに、それぞれ独立したクラゲを描く。
各クラゲの設計メモ
代表的な数匹の設計意図を、そのまま公開する。
安定メンタルクラゲ(桜色・透明)
安定圏のクラゲは、透明感を強めにした。人を疑わず、干渉されすぎるのが苦手。透明の傘の下に、小さくて丸い体。表情は平常で、少しだけ微笑んでいる。
迷宮クラゲ(青紫・渦目)
このキャラは診断村で一番の当たり役だった。青紫のクラゲに、渦を巻いた大きな目。片手にはメモ帳のような四角い箱。「相手の一言を頭の中で何度も再生する」タイプ。「一目見て何かを言いたくなるキャラ」の設計例として、以降のキャラ作りの手本になった。
笑顔マスククラゲ(オレンジ・仮面)
オレンジのクラゲが、笑顔のマスクを顔にあてている。マスクの下は見えない。「大丈夫と言いつつ大丈夫じゃない」タイプ。マスクの模様を「笑顔」にすることで、可愛さと切なさを同居させた。
深読み不安クラゲ(赤紫・触手長め)
体は小さいのに、触手が全体の3倍くらい長い。長い触手が「頭の中で伸びていく思考」を象徴している。目は伏し目がちで、少し疲れている。
没になったクラゲたち
16タイプが完成するまでに、10体以上のクラゲが没になった。
「絶望クラゲ」
真っ黒いクラゲで、暗すぎたので却下。診断村は「刺すこと」を目的にしていない。共感して笑って受け取ってほしい。
「叫ぶクラゲ」
口を大きく開けて叫んでいるクラゲ。可愛くない、そして怖い。
「メンヘラちゃんクラゲハイブリッド」
最初の「メンヘラちゃん」を諦めきれず、クラゲに女の子の頭を乗せたキャラを試作。想像通りキメラでバランス悪かった。
これらを削って残ったのが、今の16匹だ。
色決めの試行錯誤
配色は、実は診断結果の「度合い」と連動させている。
- 安定圏: 桜色〜水色(明るく、健全なイメージ)
- 中間層: オレンジ〜黄色(元気だがちょっと不安定)
- 高め: 青紫〜紫(内向的で深い)
- MAX層: 赤紫〜暗い紫(強い感情の色)
これはキャラクター全体を並べた時に「グラデーション」として見えるように調整した。図鑑で並べたとき、色の流れで「診断の段階」が視覚的にわかる。
キャラクターに名前をつけるコツ
診断村のキャラクター名は、必ず「特徴+モチーフ」の構造にしている。
- 深読み不安クラゲ ← (特徴: 深読み)+(モチーフ: クラゲ)
- 笑顔マスククラゲ ← (特徴: 笑顔マスク)+(モチーフ: クラゲ)
- 一途愛情クラゲ ← (特徴: 一途)+(モチーフ: クラゲ)
このルールで統一しているのは、覚えやすさのため。「あのクラゲって何て名前だっけ?」と思い出すとき、特徴が入っていれば思い出せる。
逆に「マリンちゃん」「ルナちゃん」のような可愛い個人名にすると、キャラクターは魅力的に見えるが、性格の対応関係が思い出せなくなる。診断結果として機能させるには、名前自体が情報を持っている必要がある。
反響が一番大きかったキャラ
公開後、SNSでの反応を数ヶ月見て、一番刺さっていたのは「迷宮クラゲ」だった。
YouTube ShortsではShortsでは他のクラゲの5〜10倍の再生数を叩き出し、「これ私すぎる」というコメントが繰り返し寄せられた。
理由を分析してみると、以下の要素が重なっていた。
- 視覚のインパクト: 渦目の異質さが一発で記憶に残る
- 共感の広さ: 「深読みしちゃう」は自覚がある人が多い
- 痛さの適量: つらすぎず、笑って受け入れられる範囲
この学びから、以降の診断ではキャラクターを設計する時に「角を丸めすぎない」ことを大事にしている。全員好きになるキャラより、刺さる人には猛烈に刺さるキャラのほうが、結果的に多くの人に届く。
これから
メンヘラクラゲたちは、公開してもう長い。何度か細部の色調整はしたが、大幅な変更はしていない。愛されているキャラは、そのまま残すのが正解だと思っている。
将来的には、この16匹をもっと動かしたい。今は静止画のShortsが中心だが、いずれAIアニメーションが実用的な品質・コストになった時、メンヘラクラゲたちを動かして短編動画にしたい。彼らが村の中でどう暮らしているか、キャラクター同士がどう会話するか、想像するだけで楽しい。
その日まで、迷宮クラゲたちは今日も診断結果の中で、あなたを待っている。
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